nyfintechのブログ

New York在住。FinTech関連の情報をアップしていきます。

9月最終週 ニュース

FinTech関連ニュース

RBS prepares to launch standalone digital bank

  • 英のRBSが消費者向けの新しいデジタルに特化した銀行を作るとの報道
  • 新銀行の名前はBoで傘下のNatWestの顧客を対象とした銀行になるとのこと。
  • 店舗は持たず、携帯でのみアクセス可能

Goldman Sachs Enters U.K. Savings Market, Continuing Consumer Push

  • 米国投資銀行のGoldmansachsの消費者向けオンライン専用銀行のMarcusが英国に進出。
  • 18歳以上であれば口座を作ることが可能。預金額は最大25万ポンドまでとし、金利も5%つくという。
  • 英国への進出は消費者に対してのイメージ回復及び、 Fundingを増やす狙いがあるとみられている。
  • 米国では2016年にサービスを開始、150万人の顧客を持ち、$232億ドルもの預金を持つ。

Robinhood releases an official statement, says they do not sell customer information

  • Robinhoodがオフィシャルステートメントで現在顧客から集めている情報をHFTなどに「売っていない」こと、さらに最良執行義務を守っていることを発言した。
  • Payment For Orderと言われるビジネス慣行(取引所・ホールセールブローカーがオーダーを受けるためにキックバックを支払うこと)がRobinhoodの収益源の一つ中心となっているが、あくまでもそのモデルが最良執行を邪魔していないことを説明した形

 

FinTech 関連ニュース:ブロックチェーン協会の設立

Washington Post や複数のメディアによると、Coinbase(最大の仮想通貨交換業者)やCircle(ブロックチェーンを通じた支払いを提供)などの 企業が中心となり、主にロビー活動、法や規制の提案などを行うBlockchain Associationを作ると報道された。創業グループにはCoinbase, Circle以外にも、スタートアップ企業のProtocol Labs. やVCの Digital Currency GroupPolychain Capitalなども含まれる。
参照:

cryptovest.com

上院議員ともコネクションのあるKristin Smith(元々Overstock.comという企業のロビイスト)やProtocol Labs の顧問弁護士のMarvin Ammori、起業家の Josh Mendelsohnなどの面々がリーダーシップをとり、ブロックチェーンや仮想通貨に対しての、政府関連者との法や規制の整備の意見交換をしていくとのことである。

Bitcoinに代表される仮想通貨は去年から今年の初めにかけて、価格が高騰。それに伴い、多くの投資家や関連ビジネスや企業が生まれた。投資熱は以前よりも落ち着いたが、当局からの監視、規制は厳しくなる一方である。
最近も、仮想通貨のヘッジファンドに対して、SECが投資会社の登録を怠ったとして強制措置を発表。さらに、ICOの発行を手助けしてたTokenLotという企業に対しても、未登録のbroker dealerとして、強制措置が取られ、結果TokenLotはビジネス停止に追いやられた。

今後も厳しくなっていくであろう規制に対して、業界としてブロックチェーン「協会」を作り、積極的に交渉を行っていく狙いがあると思われる。

FinTech 企業紹介:消費者とブローカーをつなぐAPIを提供するTradeIt

 

総合マーケット情報を提供するYahoo Financeの発表によると、今後Yahoo Financeのユーザーは自社の Yahoo Finance のiOSのアプリを通じて、仮想通貨を取引できるツールを開発した。ニュースリンク

ユーザーは、ビットコインやイーサリアムなど4つの仮想通貨をアプリ上で取引することができるようになる。ユーザーは、仮想取引交換所のCoinbaseのアカウントを持っている必要があるが、わざわざCoinbaseのアプリ上から取引をする必要がなくなり、Yahoo Financeアプリ上で価格情報やチャートなど基本的な分析をし、そのまま取引まで行うというストリームラインなワークフローが可能になった。

これを可能にしたのは、アプリ開発者に対して、API (Application Platform Interface)を提供する TradeITである。すでにCoinbaseと自社APIを使用して繋がっていたTradeItがYahoo Financeに対して自社のAPIを使用してもらうことで、 Yahoo Finance上での、取引前分析から実際の執行までの流れを繋げることが可能となった。その他にもFOREX.com為替取引プラットフォームとマーケットの売買タイミングを提供するTrigger Finance を繋げて、個人投資家による為替市場の分析、取引のフローを効率化させるなど、下記の複数のオンラインブローカーと様々なアプリを繋げることができるようだ。

 

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こういった他のアプリ(特にモバイル)とオンラインブローカーを繋げることのできる APIを提供する意味は大きい。

 

まず、第一にオンラインブローカーの視点からすると、取引量の増加につながるだろう。金融商品を取引する際に、現在の価格、取引量、ニュース、分析ツール、他者の意見など様々な情報を基に判断・執行する。 オンラインブローカーのアプリからのみではなく、他のアプリからも取引を可能にすることで、カスタマージャーニーの改善にもつながり、今後の取引量増加につながる可能性が多い。

 

また、第二にアプリデベロッパーの視点からすると、TradeITのようにすでに複数のブローカーとパートナーを組んでいるAPIを使用することで、それぞれのブローカーとのAPIを使用する手間が省ける。また、こういったブローカーとのアクセスを持つことによって、アプリの価値を上げることができるだろう。

7/29 - 8/4 気になるニュース

 

8月1日のQuartzの記事Apple is becoming a formidable FinTech company to rival Paypal/Square

  • 2018 Q2の決算発表によるとApple Payが好調
  • ここ1年で約3倍に上がった$1B(Paypal $2.3B)
  • 今後はAlibabaのAnt Financial のようにPaymentを通じて得たデータを使用し、投資対象に銘柄などを推奨できるロボアドバイザーなどの分野にも進出していくのではないかという見方がある
    • この点については、アマゾンにも同じような見方ができる。参照記事: How Amazon could start managing money。他のロボアドバイザーが成功した一方で、追加的に広告活動をしていく必要があるがアマゾンはその膨大な顧客層に対してのアプローチが容易かつ豊富なデータを持っている。アマゾンの持つ技術と合わせることで、どこよりも優秀なロボアドバイザーを作ることは可能。
  • また同様のPayment会社である、JPMやBofAなどの銀行が共同で出資したZelleが、去年に比べてユーザー数が73%の増加し、 274万人のユーザーを獲得して、229万人のVenmoを抜いた。

 

今後も、アマゾンやアップル、さらにはグーグルなどの大きなテクノロジー企業のFinTech(例:ロボアドバイザー)への進出が進んで行く。既存の銀行はもちろん、BettermentやWealthfrontなどのビジネスへの影響が大きい。

 

7月31日のBarron’s FintTech gets a huge from the Trump Administration

  • 米財務省が7月末にFinTech企業の推進のための規制案のレポートを発表。
  • 200ページ以上にもわたるレポートでは約80の案が盛り込まれている。
  • FinTech発展のための、トランプ政権のバックアップを得ることができた。
  • レポートの中では、例えばSquareに銀行ライセンスを与えることや、Regulatory Sandbox(レギュラトリーサンドボックス)を行うことが提案されている。
  • データ流出やデータガバナンスに対してのルールも作っていくよう提案されている。

 

より制度が整備されることで、クオリティの高い企業やサービスが増え、かつ投資家のリスクも減っていくことで今後もFinTechへの投資が増えていくと考えられる。

FinTech 企業紹介: AI / MLを活用した新しいHFT

ニュース

Domeyardは、孫正義のソフトバンクも投資をしているMITの学生3人がスタートしたヘッジファンドである。今年の1月に日経新聞でも取り上げられたようだが、Domeyardの創業者の一人でもあるChristina Qiのインタビュー記事があり、非常に興味深いので共有する。

 

要約は以下 

  • 創業:創業者の3人は学生時代に金融機関のトレーディングデスクでインターンをしたことはある。そこで、技術を適用する時間が遅いことに問題点を感じていた。また、自分達でも投資をしていて、 技術と金融マーケットの2つに対して情熱があったため、就職をせず、創業を決意。
  • ソフトバンク:(ソフトバンクが中国のレンレンを保有、レンレンがDomeyardの92%を保有していることから間接的に投資していることに対して)WeWorkとUberと同様のポートフォリオに入れられていることはcrazyだと感じている。
    *詳しくは Forbesの記事
  • 投資家について: ファンドのサイズが小さいため、少数のLP投資家にファンドキャパシティを取られてしまうから。投資家を制限している。また、 高い利率を課している。自分たちと同じ長期的なビジョンを共有できる投資家を選んでいる。
  • 取引高:1日約15億ドル
  • 差別化:他のHFTとの差別化 については、マシーンラーニング(ML)とAIを使用している点。殆どのHFTはMLをアルファ創出のためには使用していない。典型的な取引ストラテジーはシンプルなため統計的なモデルはあまり必要ないと考えられているが、私たちはMLを使用することで得られることが多いと考えている。ただ、MLを使用することは非常に難しい。普通の取引ストラテジーの二倍の労力が必要。(速いだけじゃなく、複雑なモデルも必要となるから)Domeyardは、MLを使用して、取引シグナルを常に調整している。また、NLPを使用して、非構造化されているデータを、意味のあるデータにしようとしている。今後HFTは速さよりも、情報処理能力の強いHFTに強み(エッジが出てくる)と思う。今はどこにいても同じような速さのデータが出られる。 速さは少なくともDomeyardが注力している分野ではない。
  • Crypto – もちろん見ているが、ここ数年は取引しない。一年で1000%のリターンは魅力的だが、規制やボラティリティを考えるとリスクが高いと感じる。
  • 長期的なゴール:DomeyardはヘッジファンドよりもFinTech Start upのような気がしている。それはDomeyardがたくさんの知的財産を作ったから、例えば取引プラットフォームや、リスクシステム、フィードハンドラーなどは全て社内で作ったもの。それに対して、投資家が価値を感じてくれているのだと思う。今後このシステムやデータ処理の特徴を生かして、別の分野にも活用できるかと思う。今、取引プラットフォームをライセンス使用させるという話も進んでいる。
  • HFT:HFTの業界の中で、アジアの女性で最も成功しているCEOとしての認識はある。それは、周りの人から特に言われること。自分はHFTに対してのひどい評判を変えたい。そのために会社もフラットな組織にして、それぞれをリーダーとして扱っている。今は、年間2万件や3万件もの応募が来る。これはこのサイズの会社としては非常に多いと思う。

FinTech 企業紹介: 短期の貸借にPeer-to-Peerマーケットを提供するLMX  

FinTech関連のニュースメディアのDigFin Groupが5/1にLMX(正式にはLiquidity Market Place)が米国市場で短期金融のP2Pマーケットプラットフォームをリリースすると報道した。ニュースによると、米国のウエストコーストにある2つの Tech企業と中国・スイスの銀行間でのパイロット的なやりとりのようであるが、CEOのThomas Schickler曰く、今後は銀行やノンバンクのヘッジファンドなど、参加者が増えることでよりプラットフォームも充実していくだろうとと述べている。

 

LMXが対象としているのは、約$7兆もの規模の残高がある企業や金融機関も含めた短期金融市場(短期の貸付・借入れ)である。記事によると、バーゼル3などの金融規制により、銀行のレバレッジや流動性比率などを細かく管理する必要性が出てきたことにより、短期での貸付が減り、短期金融市場の流動性が低くなっている。そのため、借入れをしたい企業は高い金利で借入れをする必要があり、またCPなどの短期金融資産に投資したい投資家は流動性が低いためより高い手数料・スプレッドを払っての取引が必要となっている。

 

そうした現状に対し、LMXは仲介業者(証券会社や銀行)を介さないSTABLという取引のプラットフォームを作った。これは、参加者(企業や銀行)が一つの契約書をサインしり、それぞれが無担保ローンを貸借するというプラットフォームである。メリットとしては、 流動性の高い企業であれば、取引の両サイドに対して、取引額の約1bps – 5bpsという通常より安い料金で取引が可能となり、さらに流動性が確保されている点である。また、例えば米国で運営する外国銀行なども、新しい取引先を見つけるという使い方もある。

 

LMXはアジアを中心にビジネスを広げてきており、今後は米国市場での拡大を狙っている。今までに約 $3Mの投資をJavelin Startup-O Victory Fundなどから 得ているそうであるが、今後どうやってBloomberg やTradewebなど、大手との競争を乗り越えて、成功していくか注目である。

FinTech 企業紹介: 不動産とブロックチェーン

 

企業紹介: RealBlocks

Web: https://www.realblocks.com/

CEO: Perrin Quarshie

RealBlocksは、不動産資産の投資プラットフォームを提供している。

 

不動産オーナーは、RealBlocksを通じて保有する不動産をRealBlocksプラットフォームに載せ 、 「トークン化(tokenization)」することを通じて、資産を流動化・資金調達をすることができる。一方、投資家は不動産・RealBlocksの発行する仮想通貨に対して投資することができる。

 

注目されている点は、 ブロックチェーン技術を使用していることである。ブロックチェーンによって、世界中の投資家からアクセスが容易にし、資金調達・投資のプロセスの透明化、流動性を高く保つことができる。また、BitcoinやEhtereumなどの仮想通貨で不動産投資を可能にしている。ボラティリティの高い 仮想通貨を持つ投資家に対して、相関の低い不動産に対して投資する機会を提供することで、 ポートフォリオの分散を図ることができるようになる。

 

 

この企業について知ったのは、FinTechのMeetupでのDemo Day。CEOのPerrinが直接プロダクトについての説明をしていたが、彼はもともと原発の技術者で日本にも滞在していたことがあるそうだ。彼らがターゲットにしている不動産のPrivate Placement (私募)は約$30Bのマーケット規模とのことで今後も成長が期待できる市場である。